2004-09-20

最近読んだ宇宙開発本  [by miyachi]

なんか宇宙開発カテゴリって食玩ばかりって言われそうなので、最近読んだ本から感想を幾つか。

その1:宇宙の傑作機 アリアン5
スペースシャトルとその影響を受けたヘルメスがあった為に思いもよらず大型化してゆくアリアン5の歴史が中心です。最近の松浦さんの持論であるスペースシャトルと国際宇宙ステーションの悪影響をアリアン5をベースに展開するストーリーは説得力がありました。前著のアリアン4は自他共に認める傑作ロケットだったのですが、アリアン5はどうでしょうか?評価には今暫くの時間がかかりそうです。それにしてもアリアンシリーズ全体を通してみて、ヨーロッパ…と言うよりフランスの自主独立精神の強さには羨望さえ覚えてしまいます。政治的なビジョンが明確になっているとどんな開発も最後には実現してしまいそうです。翻って日本を見ると政治的なビジョンがどうしても「アメリカ追随」であり、アメリカの宇宙政策の変更に伴い右往左往している姿ばかりが目に付きます。アリアン5は既に20機近い打ち上げ実績を持ち、更に30機を追加発注されていると言う。ライバルと自画自賛しているH-2Aの実績はどうか?これからの予定は?実は日本の場合は政治的な弱腰の為に締め付けばかりが厳しくなっている状況のようにも見えます。日本の場合には民間レベルでロケット開発が活性化しないと難しいかもなぁ。ESAは2006年までソユーズの射点を建設して打ち上げを開始するそうだ。そうロシアとESAの協力関係が出来つつある。さて日本はどうする?と考えさせられる本です。

その2:衝撃のスペースシャトル事故調査報告 NASAは組識文化を変えられるか
著者は日本企業はNASAの危機管理に学べ!と言う本を以前に書かれている。題名から判るようにこれはNASAの素晴らしさを前提に書かれたものであり、実は今回の本も一部の章は全く同じような内容が書かれているが、コロンビア号の事故を考えると違った面が見えてくる。先の松浦さんの本と共通のするのはもはや「NASAは万能では無い」ことを色々な人が気付きはじめているように思える。もちろん一部の作家はいまだにNASA賛美の本を出していたりするが、程度が知れるので買ってはいけない(笑) おっと閑話休題。この本はコロンビア号事故調査報告書に軸足を置いた本です。宇宙開発に関係なくても組織のあり方に興味があれば1000円以下の安い本でもありますし一読しても良いのでは。

その3:上がれ! 空き缶衛星
あっと言う間に読了しちゃった本です。内容自体は良いが個人的にはもう少し細かな情報も欲しかった気がします。とは言え学生達の奮闘が生き生きと伝わって来ます。そうですやはり何でも作ってなんぼ、作って初めて判る、事が一杯あるのです。若いうちの一時期に打ち込む物に出会えたエンジニアは幸せですね。本書では空き缶衛星(CanSat)の始まりから最初の打ち上げまでを東大を中心に書かれた物です。エンジニアであればこういう本を読んでモチベーションを上げる事は大事だと思います。この本を読んでいると自分でも出来そうに思えます。私の学生時代と言えばマイコン黎明期でした。まだ自作マイコンなんかがあり、大学際ではASCIIに載っていた記事から自分達でプリント基板を焼いて通信システムをデモした事もありました。結果は失敗だったんですが、やはり自分の手でハードを作る楽しみは経験しないと判らないようにも思います。CanSatを経験した人達が時代を変えるのかもしれませんね。

おまけ:
宇宙開発は現在NASAが迷走を続けている関係で色々な意味でリセットがされる時期に来ているのかなぁと思います。中国の台頭もあり、日本の宇宙開発の将来は…私は民間の力にかかっていると思っています。アメリカ追随のお役所仕事ではまともな宇宙開発は困難では無いかと感じてしまうのです。市場があると判れば後から参入しても制覇してしまうのが日本企業の良い(?)ところなので、ぜひ期待したいですが、大企業よりもベンチャー企業により期待したい気もあります。現在の日本の宇宙開発の現場はどうしてもお役所的大企業的な面があります。それはそれでも良いのですが、やはり「好きだからやる」「やりたいからやる」人が出て来て欲しいのです。私は今の会社で少なくとも「好きだからやる」を実践しているつもりです。だからまぁ今日も休日出勤で仕事してますが、嫌ではありません。(家族には申し訳無いですが(^^;) そんな中で最近面白いと思ったのは1億円の衛星用ロケット、茨城の中小企業15社が構想と言うニュースです。こういうところに投資するインフラが揃えば日本でも色々出来るようにも思いますが、いかがでしょう?

2004-09-20 12:50:12 - miyachi - [宇宙開発] -

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