2005-01-17

iPodに見る製品開発のやり方  [by miyachi]

iPod shuffleに関する記事が続いている。既存のシリコンプレーヤを開発販売しているメーカーの感想記事をITmediaで見ていると、

iPod shuffleは怖くない? ライバルは余裕の反応
iRiver CEOが語る「iPod shuffleの驚き」

と評価が低い。理由としては液晶が付いていない点等の低機能である事をどこのメーカーもあげている。確かにiPod shuffleをメインのプレーヤに使うのであればその通りかもしれない。しかしアップル開発者がインタビュー、

iPod shuffleが液晶画面を捨てた理由

で答えている。曰く「ルールを変えようと思った。」である。個人的にこの選択は正しいと考えている。以前にも書いたがiPodの良さと言うのは「手持ちのCD全てが小さなプレーヤ1つの中に入っている点」と「iTunesと連携したシステムとしての環境提供」にあると思う。iPod shuffleに入るのはたかだが200曲程度。CDで言えば数十枚程度の量しか入らない。これでは従来のiPodの良さの1つは諦めるしかない。またサイズや価格から考えると液晶は無い方が良い。ここから戦略的に「ルールを変える」事で新たなマーケットを狙いを絞ったと言えるだろう。

つまりシステムとしてのiTunesとの連携は母艦と端末として維持する。その上でちょっと外出する時に母艦から自動的に「シャッフル」された曲がセットされる。シャッフルなのだから聞いている曲が嫌ならスキップする程度でラジオのように聞けば良い事にした。だから液晶も要らない。と言うルールに変更したのだ。

ルールを変更したと言うよりも新しい使い方やライフスタイルを提案したと言った方がしっくりきそうだ。そこを抜きにしてカタログスペックだけで評価すると競合メーカーのようなコメントになるだろう。

iPod shuffleは母艦の外部端末に過ぎないのに、競合メーカーのプレーヤはそれ自体がメイン端末なのだ。比較や評価するポイントがずれている。まぁ競合メーカーは判っていてあのようなコメントを出している可能性は高いと思うが。

特に日本のメーカーに多いのが限られたサイズや容量の中にどれだけハイスペックを詰め込むかと言う製品開発を行う傾向である。それに比べるとアップルのやり方はまずどのような「ルール」や「ライフスタイル」が良いかを考えて必要充分な機能にしてデザイン性に優れた製品開発を行う。この差がiPodと競合メーカーの差にそのままなっているように思える。

これはハードウェアやソフトウェアに関係なく製品開発をする時には意識しなければならないポイントであろうと思う。開発者の端くれとして自分もそのような発想による製品開発をやりたいものです。

なおiPod shuffleの「ルール」が実際のマーケットで受け入れられるのかどうか。それはまだ現時点では判らない。1年程度の売り上げ実績が出たら判明するだろう。個人的な予想としては従来のiPod程の実績は出ないと思う(利用形態がiPodよりも限定されると思うから)が、他のシリコンプレーヤと比較しても良い実績は出るような気がします。

2005-01-17 12:37:41 - miyachi - [CG/MAC] -

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